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「寄席育ち」六代目三遊亭圓生著(1965年)


もともと六代目圓生が好きですが、先日の韓国旅行の飛行機の中で別の噺家さんの「百川」を聴いて、圓生のうまさを再確認して以来、毎晩のように圓生を聞いています。とはいっても、聞き始めると条件反射のように、すやすやと寝てしまうので、まくらのとこしかきかないことが多いのですが。

Youtubeにその圓生の「寄席育ち」と言う演目があります。
これは、落語ではなくて、自伝のようなものをラジオか何かのインタビューで話していると言うような企画です。子どもの頃からの記憶を丹念に話しています。面白いです。
そして圓生師には同じタイトルの著作があります。そしてこちらの内容の方が何倍もボリュームがあり、面白いのです。図書館で昭和54年の第8刷、と言うのを借りてきて読んでいます。

明治33年生まれの6代目は、子供のころから寄席に出ています。学校にはほとんど通わないで、ずっと寄席とおけいこづくしの暮らし。
そしてそんな暮らしだったからなのか、物覚えが恐ろしくいい人なのか、明治の東京のことをとてもよく覚えているのです。街の様子も詳しくて「今の●●があるところを左に入って50メートルくらいいったところに」なんていう具体的な説明も多いので、訪ねてみたくなります。とはいっても「今の」というのが昭和40年くらいの話だから、いま探すとなると苦労しそうですね。また、何処から何処までは電車が走ってたとか、ここは人力車で。とか、時代考証の一級資料ではないでしょうか?

新宿に住んでいたことで有名な6代目ですが、明治のころの新宿は田舎で、田んぼがいっぱいあったとか、博労宿がずらりとあって牛馬がたくさんつながれていたとか、貧民窟があったとか、山があってその山の上から「交番焼き討ち」を眺めたとか、そんな話がどんどん出てきます。交番焼き討ちってなんでしょうね?6代目自身の経験の話も面白いですが、ほかの噺家さんの話も面白い。5代目圓生(6代目の義理の父親)の若い頃の心中話などはまるで、落語や講談で聴いているようなドラマチックな話です。

噺家さんの名前も沢山出てきますが、あまり知識がないので、そちらの方よりはもっぱら昔の生活風俗の描写を楽しんでいます。
そうそう、明治の頃は寄席は夜だけだったようなことが書いてありました。
今の朝ドラでは昼間の寄席ですね。
大阪と東京の違いでしょうか?

図書館で借りましたが、買おうかな?
買うとしたら90年代に再版された「新版 寄席育ち」ですね。

新版 寄席育ち
三遊亭 円生
青蛙房

三遊亭圓生 寄席育ち

0 thoughts on “「寄席育ち」六代目三遊亭圓生著(1965年)

  1. 掛け取り万歳
    円生はわたしも好きです。この季節掛け取り万歳など面白いですね。
    その中で義太夫を語る場面があり、義太夫は玄人はだしだと思っていたら、それもそのはず義太夫語りを目指して修行していた時期があると聞いて、納得したしだいです。ほかの人ではあの味は出せませんね。

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  2. YOKO

    掛け取り
    礁さん、ちょうど昨日あたり「掛取り万歳」を聴いていました。これは噺家さんによって、出し物が違っていて面白いですが、圓生師のはやっぱり義太夫も芝居もいいですね。芸が本物って感じがします。(義太夫や歌舞伎はそんなによく知りませんが)

    三河万歳というものを良く知りませんでしたが、半七捕物帳に三河万歳のことがテーマになった短編があります。タイトルもずばり「三河万歳」。今もちゃんと保存会などで残してはあるようですが、お正月の風物詩と言う位置はとうに失われていますよね。掛取り万歳も面白さが半分もわからない有様で残念です。
    今の噺家さんで「三橋美智也がすきな三橋やさん」と言うのを盛り込んでいる人がいるようですが、これだって、そのうち分からなくなってしまいますね。

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