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ヨーロッパの昔話 その形と本質 (岩波文庫)

先日、恩師からご連絡をいただいて、今度岩波文庫に入った自分の翻訳本についての講義を行うから時間が取れたらおいで、とのことだったので、同期たちを誘って出かけてきました。なんでも80分講義を3コマ行うらしい。
すごい。
相変わらず先生はすごい。
87歳ですよ。

ちなみに、テキストはこの本。マックス・リュティと言うスイスの研究者により1947年に書かれた本で、日本では1969年に小澤先生の翻訳により出版されましたが、今年の夏、岩波文庫から改めて発行されました。

ヨーロッパの昔話――その形と本質 (岩波文庫)
マックス・リュティ
岩波書店

会場は、代々木のオリンピック記念青少年センター。
天気も良く、代々木公園の紅葉もキレイでした。

会場に行ってみると、なんと200人教室。当日の参加者は180人を超えているそうです。(定員を超えてしまったので、追加日程を出して少し分散してもらったのだそう。大人気です。)参加者は、先生の主宰されている「昔ばなし大学」の研究会参加者(基礎コースが終わってさらに勉強を続けている人たち)の関東地区の人たち。この講義は、これから全国9カ所で開催されていくそうですよ。いったい日本中にどれだけの教え子たちがいるのでしょうか???

私たちには、ほかの招待客~~岩波書店の人や、他の出版社の方、通信社の方、先生のお仲間の研究者の方々~~と一緒に「招待席」が用意されてました。「のぞきにおいで」と言う話だから、後ろの方にこっそり立って見るのかと思いきや、良い席をご用意していただき、これはしっかり講義を聴かなくては!
はじめに招待客の紹介などもあったのですが、私たち大学の教え子は「応援団(=やじうま=遊び仲間)」と紹介していただきました。真面目な「昔ばなし大学」の皆様に対して、ふざけた姿勢が申し訳ない気持ちですが、先生の愛情を感じます。ありがたいです。

講義は、小澤先生とマックス・リュティ先生との出会い、本の翻訳のいきさつなどから始まりました。
リュティのこの原書との出会いは、先生が東北の薬科大でドイツ語の先生をしていたころ、東京の紀伊國屋書店の洋書コーナーでたまたまこの本を手に取ったのが始まりだったのだそうです。当時リュティと言う名前も知らなかったけど、「Merchen~メルヒェン」とタイトルにあったので、素通りできずに買ってきて、読みだしたらその内容の斬新さにショックを受けたそうです。
それで、自分で翻訳を始め、リュティ宛に翻訳の許可を求める手紙を書いたのだそう。住所なども当然知らないので「スイス、チューリッヒ市、●×出版社、マックス・リュティ様」で出したのだって。そしてその手紙は無事リュティに届き、翻訳OKの返事をもらったのだそうです。

でも日本で出版してくれるところを探すのは大変で、やっと出してくれる出版社が見つかったのはいいのだけど、条件が「印税などはなし」だったそうです。そのことをスイス側に伝えると「わかりました。では、象徴的印税として、出来上がった本を出版社に5冊、リュティに5冊送ってくれるなら出版を認めましょう」ということになり、1969年に出版できたのだそうです。
その後、ドイツの大学に研究者として滞在中に、スイスまでリュティに会いに行った話も面白かったのですが、多分この話は先生の出している雑誌「子どもと昔話」のどの号かに書いてあったと思います。

講義は、この岩波文庫を一文ずつ漏らさず読みながら進んでいきました。ぜんぶ先生が読んでくれて、そこに解説がいろいろな例を織り交ぜてちりばめられます。なんという贅沢。本を読むのに、こんなに丁寧に読んだことないかも。(今までで一番丁寧に読んだのはこのブログでも長く展開していた「SHERLOCK」のセリフですね^^)
ノートも取りましたが、先生の解説を本に直接書き込みました。

80分なんてどんなに長いのかしら?と思っていたのですが、あっという間に時間が過ぎていき、3コマ終わってしまいました。かなり集中してたので、脳みそは疲れ果てていましたが^^小澤先生の話は、「語りのプロ」だなぁといつも感心させられます。面白くて面白くて、いつまでも聞いていたいと思わせられ、面白いだけでなく、話の内容はすっきり理解できるようになっているんです。
そしてその先生は、3コマの講義後も疲れも見せず、夜の「交流パーティー」へ出席されていました。
脱帽・・・。

今年から「昔ばなし大学」に参加して『基礎コース』を受講している友人がいるのですが、「その会は相当高度な内容だよね、私なんかとてもとても~」と言っていたので、どうもとんでもないところにお邪魔させてもらったようです。
ありがとうございました。
わたしは「昔ばなし」を勉強しているわけではありませんが、この講義で、本の読み方を教わったように思います。また、勉強するテーマとの出会い、勉強(研究)への取り組み方、先達との交流の仕方のヒントなども教えてもらったと思います。あ~すごかった。

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