そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう
台湾の方がこの詩の一部をネットに載せていました。
全文を読みたくなりさがしました。
高村光太郎の有名な詩です。
旧カナということ
この詩を読んでいて純粋な詩人の心に触れるということの外に、旧カナ表記の奥床しさを感じます。
国語審議会によって旧カナ遣いは一掃され、今では公式の文章でお目にかかることはなくなってしまった。漱石の文章なども出版されるときは新カナに書換えられる。「いる」は「ゐる」、「思う」は「思ふ」、「置こう」は「置かう」等、この詩では旧カナのままになっている。
意志の伝達手段としての文章は新カナでよいが、感動を伝える「詩」などにあっては旧カナの方がはるかに美しい響をもっているのではないか・・。
「たうえふたう」これを漢字で表記してみてください。
「たうえふたう」
「たう」→とう
というのは分かるのですが、
「えふ」はなんでしょう?
「てふ」が「ちょう」だから
「えふ」なら「いょう」かな?
現代的書き方なら「よう」か。
「とうようとう」???
聞いたことのない言葉です。
というわけで調べました。
「桃葉湯」!!
桃の葉エキスは入浴剤によく入ってますよね。
これでちょっと面白いと思ったのは、「葉」という字、広東語だと「イップ YIP」と発音して、「P」で終わってます。
古い日本語で「えふ」と書くのと共通するものがありますね。
よくできました。正解!!
実は歳時記の季題としてある言葉です。
桃の葉を入れた風呂に浴すれば、汗疹に効くというので民間でも桃葉湯を立てるところがあり、お風呂屋でも土用頃、桃葉湯を始める書き出し等をよく見かける。と歳時記にありますが、今日ではほとんど死語となってしまいました。
桃葉湯丁稚つれたる御寮人 虚子
安達太良山のそら
たまらなくいい詩ですね 少し寒気がします
東京には空がない と言った智恵子の空 子供のころ2本松付近で仰ぎ見ました 土器や石器の採取に出かけたとき 義兄から智恵子抄のことを教わりました あれ以来です 未だ寒気が取れません
御寮人って?
御寮人って奥様のことでしょうか?
むかしテレビドラマで大店のおかみさんのことを「ごりょんさん」といってたのがあったような・・。
前のコメントに書きましたけど、「桃の葉エキス」を入浴剤に入れたものが発売されています。そういう形で今にも受け継がれていますよ。
ゴジさま
二本松の辺りで土器や石器を取ることができるのですか?さすがに今はできないのでしょうね。
智恵子抄は教科書に載っているものくらいしか知りませんが、今度ちゃんと読んでみたいと思います。
寒気がお風邪になりませんように・・・。