今の時期はクチナシの花が咲いていますね。
梅雨の晴れ間、自転車で会社へ行った帰りの道で、ふわっとクチナシの香りが漂ってきました。
宵の口に嗅ぐクチナシの香りは、なぜか17歳の頃に連れて行ってくれます。
17歳、高校3年の今頃のことです。
高校総体も終わって、そろそろ受験勉強に本腰をいれなくちゃというころ、
丁度、住んでいたアパートの隣の空き部屋を借りることができて、家の広さが倍になりました。
受験生ということで、自分の勉強部屋をあてがってもらえました。
今思うとちょっと不思議ですが自分の部屋ではなく、純粋に勉強部屋でした。
寝る時は、元の部屋に戻って家族で川の字になって寝ていました。
その勉強部屋は真ん中にどーんと机を置いて、あとはちょっとした棚があるだけ。
殺風景な部屋だったような記憶です。
学校の道具は制服もそこにおいていました。
壁に簡単に取り付けた昔ながらの金属の棚があり、
ーーああいうたなはもういまではみかけませんがーーー
そこに、校章のピンや腕時計などをちょんと載せて、
その横に鏡をかけ、朝から髪をポニーテールにしたり、制服のネクタイを締めたりして、
弟たちと争わなくても朝の支度が自分のペースでできるのが嬉しかったものです。
ある日、その棚の上にクチナシの花が飾られることになりました。
父が持って帰ってきて、私にくれたのです。
多分、落ちていたのをひろったかなにかでしょう、枝もついてなくて花だけの白い八重のクチナシでした。
父から花をもらうというのは、滅多にないことです。
そしてそれが、私にとって初めてのクチナシという花とのの出会いでした。
一輪挿しとかそんな気の利いたものはないので、
当時我が家でちょっと人気だった、はごろも缶詰の蜜豆の小振りの空き缶にいけることにしました。
それからしばらくの間、部屋中にあの独特の芳香がたちこめていました。
私は受験勉強をしながら、クチナシの香りを覚えました。
ふしぎですね。
クチナシの香りなんて、毎年かいでいるはずなのに。
夜に香りが漂ってくると、あの蜜豆の空き缶にいけられていたあの時の情景が真っ先に思いうかびます。
将来庭を持つことができたら植えたい木が何種類かあります。
まず、沈丁花、そして梅、クチナシ、キンモクセイ。
季節ごとに香りを楽しめる花を咲かせる木です。
香りは記憶と直結するんですよね。
金木犀の香りは、トイレとかいう人もいますが、私にとっては運動会。
でも、その香りを実際今かいでないから、ディテールは、クチナシほど思い出せない。
金木犀の話はまた10月にでも。